--------------------
保健婦さんへ
坂西 志保
1
1參議院外事
pp.8-9
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200005
- 有料閲覧
- 文献概要
人間は健康なのが常態なのか,それとも病氣している方が普通なのか一寸判斷がつかないほど世の中には病人が多い。文明と病氣とは平行して進んで行くとかいつた評論家がいた。あまり有難くないことで,丈化が後退したならば病氣は少くなるか,と反問したくなる。過去半世紀の間に人間の壽命は驚くほど延びたといつて私たちは喜ぶけれども,それは小兒や幼年時代の死亡率が低下したためで,30を過ぎてからの死亡率は50年前も今日もそう變らないという。言い換えるなら,醫學衞生,科學全體の進歩發達によつて死ななくてもよい赤坊や子供は生きのびることが出來るようになつた。その最もよい例は種痘であろう。今日,天然痘に罹るということは新聞のニュースとして取あげられるほど珍らしいのである。ペニシリンやサルフア劑も劃期的な發見であつた。昔から稼ぐに追付く貧乏なし,というけれども,新しい發見はまだ病氣に追いつけないようである。
ナポレオンは「不可能(インポシブル)」という語は字引にないといつたが,アメリカ人は醫學の部門では將來あらゆることが可能だという固い信念をもつている。特に豫防衞生の方面ではまだ仕事か始まつたばかりで,今後の進歩に大いに期待をかけ,病氣をなくすため努力している。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.