都市の声農村の声
染谷睦子様
山口 絢子
1
1大森保健所
pp.45-46
発行日 1961年5月10日
Published Date 1961/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202328
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お便り有難く拝見致しました.都市,農村と立場は違つておりましてもお互いの悩みには共通の流れがあることをお話のうちにしみじみと考えさせられております.またその中にあつてよりよい仕事を進めてゆくために心を砕いておられるお姿を思いおこし,それが決して一人,二人の者ではなく,同じ仕事に生きるすべての人の姿であることをしらされ,心励まされております,お話をうかがえばうかがうほど,農村的色彩の濃い社会でのお働きが如何に大変なことかつくづくとお察し申し上げております.しかし都会とは申しましても,こちらもやはりまだまだ,高度化し,複雑化した社会機構の中で逆にその機構の部分化し,自己の殻に入つてしまうような人間関係,その中ですらなお残存しつづける封建性,都会のと申しますより今,私のおります土地の問題は,そういうところからきているのではないかと思われます.このような狭い社会の中での分離化された生活を,ある人は「人間そのものが人間性を失つて部分化されて行く」と申しましたが,そういう意味で今後にはますますむずかしい問題が投げかけられているようです.いやに観念的に走つてしまいましたけれど,訪問後の地区の方たちの態度について私の場合をお話するつもりでおりましたの.かつて訪問した人に街であつたとき,貴女がお遇いになつたようないやな目にはそうあいません.
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