附録
巻頭カレンダー解説—ピサロ「ワラ塚」
pp.18
発行日 1960年10月10日
Published Date 1960/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202184
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ピサロは中米のアンティユ島に生れたユダヤ系のフランス人で,少年時代にフランスに移つた.25歳の頃からコローの影響を受け,後にパレットナイフを用いてクルーベエの影響を思わせる時代もありましたが,再びコロー風に戻つています.家は豊かではなかつたのですが生活力は旺盛で勉強家でした.普仏戦争の時はロンドンに逃げて,モネーと共にターナーの作品に感心し,後に印象主義を確立しました.印象派の仲間では年長でもあり,性格も穏やかで附合いもよく,とげとげしい性格のセザンヌでさえも,彼に常に尊敬をはらつていたといわれています.印象主義への移り変りも前進的で,色彩もモネー程派手でなく青つぽく落ついています.シニヤックが点描法を創始したのはピサロの短いタッチから暗示を受けたと言われていますが,シュヤックが点描法を創始すると,大先輩であるピサロは逆にその影響を受けて細かい点描を用いたのです.
彼は尊大ぶらない人で,後進の技法でもよしとすれば,これを採用する心のゆとりがありました.純然たる点描は2年程しか続かず,またコンマ状のタッチに戻りましたが,画面の処理は以前より理知的になつたようです.
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