カレンダー解説
カミーユ・ピサロ
pp.39
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202521
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二人の女が垣根越しに何やら話し合っている.その辺の路端でよく見かける,市民のありふれた姿です。《立ち話》はそんな姿を,ありのままの形でうつしとった一幅の庶民風物詩です.緑の木蔭濃い細道に沿うた柵の内と外にたたずんだ,農夫の妻と別荘番の女房なのでしょうか.
この《立ち話》の作者ピサロは,印象派の主将モネのよき伴侶でした.ピサロははじめバルビゾン派の画家コローに絵を学び,そこで多くの画家達を識ることが出来ました.コローのアトリエは彼にとって,風景画というものに対する考えを深めるのに,大層役立ちました.後モネらと交遊し,印象派の端緒をつくりました.普仏戦争にはロンドン範渡って難を避け,ターナーの作品に強い影響をうけて帰国し,パリ郊外のポントワーズに住んで,主に農村風景を描いて,印象主義の様式を次第に深めていきました.後にはスーラの点描主義の影響をうけましたが,好んで田園風景をかき,風景画の多い印象派のなかでも,風景画家の代表作家とされています.外光にまぶしく輝やく町はずれを写生した,彼の風景画は,実に軟らかな美しい,夢のような雰囲気につつまれています.
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