コンタクトレンズ(16)
男性と女性
長谷川 泉
pp.33
発行日 1960年8月10日
Published Date 1960/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202148
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「あなにやしえおとこを」「あなにやしえおとめを」—なんだか怪しげな呪文だと思うかもしれないが,これは「古事記」に出てくるいざなみのみことといざなぎのみことのことばである.お互をほめ合うことばである.「まあ,なんと,あなたはすてきな男性なんでしよう。」「おお,なんと,あなたはすてきな女性なんだろう。」というわけである.2神の唱和はこのようにして,お互の讃美にはじまつて,日本という国の国生みが進行したのである.もちろん伝説,神話の世界の話である.
ところで,この2神の唱和の順序に注目していただきたい.「あなにやしえおことを」は女神の男神讃美の辞である.「あなにやしえおとめを」は男神の女神讃美の辞である.「あなにやしえおとこを」「あなにやしえおとめを」の唱和は,女神が男神よりも積極的であることを示している.「古事記」の説くところでは,女性が男性をしのいで積極的に出た場合の子生みは失敗し不幸な結果になつた.そのために,国生みはやり直され,今度は男性が積極的に出ることによつて,健かな,すぐれた国生みがスムースに進行することになつたのである.かくて,日の本の,瑞穂の国を形づくる大小いくつかの島々が生み出された.
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