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保健所保健婦はどんな時期に来ているか
知花 みゑ
1
1静岡県衛生部医薬課
pp.28-30
発行日 1960年7月10日
Published Date 1960/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202126
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◎トランジスター保健婦
この春保健婦学校を修めたばかりのA学生を,本県のさる保健所に採用することになつた.専任教師から推せんの折,印象的に聞いた事は,唯「…とても小柄ですよ…でも健康に云う処はありません,是非云々」,こんな会話があつた.それから1ヵ月程して県で採用することとなり,確定の意味で本人にお目にかかることになつた.この頃の学生には珍しく父親に伴われて来庁した.私は逢うと途端に専任教師の小柄ですよと云つた言葉が思い当り,内心ほほえんだ.小柄であつたが愛くるしい印象を温めている間に,彼女は「私,辞令が出る迄私の行く保健所の地区のニードを考えて行きたいと思いますので何にか良い参考資料か衛生統計がありましたら見せていただけませんか」と.開口一番求めて来た.瞬間私はまばたきもせず彼女の瞳に見入つてしまつた.彼女の昨日迄の学生時代のノートには,きつと,公衆衛生看護事業のあるべき原則が実に理路整然と記されていることだろうと思つた.そしてそれを明日からの職場に実践しようと脈々としている事だろうことを強く感じた.
私の上司は「保健所に独立した保健婦事業は存在しない」とよく云われる.今,言下に彼女にこんなことを云つたら,首をかしげる前に,私を,なんと保健婦事業を理解しない人だろうと蔑むことと思う.
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