論説
保健所と醫療問題
齋藤 潔
pp.189-190
発行日 1947年9月25日
Published Date 1947/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200178
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保健所に於ける醫療問題が最近特に論議されてきた。保健所自體が所内に於て行ふ醫療と,保健所の機能の中へ醫療問題を取り入れて考へること,即ち醫療も公衆衞生の一部であるといふ考へ方とは別問題である。抑々わが國の保健所は大正の末頃内務省に保健衞生調査會が設置されて,諸外國のHealth Centerが同委員會で調査檢討された頃から,識者の間に認識されてきた。當時の社會状勢ではその實現は殆んど望むべくもなかつた。然るに昭和の初め頃,やはり内務省内に公衆衞生技術官訓練機關設立準備委員會が設置されて,現在の公衆衞生院の創設準備が内務省とアメリカのロックフェラ財團との間にすヽめられた。公衆衞生院の本質は衞生技術者の訓練機關であつて,その實習機關として都市竝に農村地區に模範衞生事業の機關が設置されることゝなつて,都市型のものが現在の東京都中央保健所の前身である東京市保健館であり,農村型のものが所澤保健館で現在の埼玉縣所澤保健所である。この兩保健館はやがて出現する公衆衞生院の實習場であるから,院の事業開始前に出發することゝなつた。東京市保健館は昭和10年1月,また所澤保健館は昭和12年既にその事業を開始した。この保健館の機能は地區衞生事業であると同時に教育機關でもあるから,現在の保健所とは稍々趣を異にしている。--最近の保健所は實地修練生の實習教育機關ではあるが專門技術者の實習機關ではない--。
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