社会の窓
ソ連の学制改革
阿部 幸男
1
1読売新聞社婦人部
pp.48-49
発行日 1959年2月10日
Published Date 1959/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201814
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ソ連は来年から始まる7ヵ年計画の準備とも関連して,教育制度の改革問題が起り,全国民的な関心事となつている.学制改革という大問題に手をつけざるを得なくなつた理由は,現行の教育制度の欠陥が目に余るようになつたからだという.その欠陥がいま日本の教育制度でも,悩みの種となつている事例とよく似ている点が多いことは興味深い.
それはソ連でも高等教育が立身栄達の手段のように理解されている傾向が強いことである.生徒も,親も,また学校自体も一定量の知識をつめこんで,卒業証書を貰い,或いは与え,それによつて相応の社会的地位につけるという風習から脱し切れていない.「勉強しないと入試に合格しませんよ」と子どもを受験準備に追つている親達の姿は,そのまま日本の親達の姿に当てはまるというわけだ.『大学に入れないと労働者になつてしまうから』と,労働者の国でありながら親も子も肉体的労働を嫌つて,頭脳労働者になりたがつている.つまり,ホワイトカラーの魅力が日本同様に幅をきかしているのである.
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