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編集者から読者へ
長谷川 泉
1
1編集部
pp.6
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201536
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社会生活のなかで,文明の尖端に接してばかりいると,地方の実情にうとくなつて,ほんとうの第一線の公衆衛生担当者の苦労が,わからなくなつてしまう危険があります.このことは,いちばん注意しなければならないことでしよう.なぜならば,雑誌は都会の読者ばかりでなく,広く日本の全国の読者—そのなかには不便な田舎で,黙々と献身的な仕事に励んでいる愛読者が含まれています—それらの読者の方方に向けられたものだからです.
現実から眼を蔽つてはいけない.現実から遊離してしまつてはいけない.このことは,私たちがいちばん気をつけなければならないことです.そして,そのことは,おそらくは対人関係を最も重要な仕事の要素とする保健婦さんにとつても大切なことであると思います.千葉県は東京に近く,文化のめぐみをいち早く受けることのできる位置にあると思います.しかし,そのようなところでも,最も進んだ文化の恩沢に浴すことのできない次元での生活のなかで仕事をしてゆかなければならないことのあることを痛感いたします.そこから何かをつかみ出してくること,まず沈潜して,それからおむもろに浮び上つてくること,そのことが大切だと思います.浮き上ることは一番あとでよいのだと思います.
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