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気分次第読み放題・5
『ねずみくんのチョッキ』『また!ねずみくんのチョッキ』『またまた!ねずみくんのチョッキ』—(なかえよしを・作/上野紀子・絵,1974・1976・1979)
横井 郁子
1
1東京医科歯科大学
pp.494-495
発行日 1999年5月1日
Published Date 1999/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905845
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「NO!と言えない」自分がもどかしいとき
『NOと言えない日本人』という本のタイトルがありました.失礼ながら中身は読んでいないのですが,タイトルが先行していたのか,いろいろなところで見かけた言葉です.流行語とまではいかなくとも,多くの人が耳にし,なんとなく納得した方が多かったのではないかと思います.「YES」「NO」をはっきり言う西洋人,にっこり笑って返事をあいまいにする日本人,という絵が容易に頭に浮かんでしまったのでしょう.日本人だから,という大きな枠をはめることは好きではありませんが,はずかしながら私には,「NO」と言わなかったことを後悔した経験が少なくありません.
ときどき,ぶつぶつ文句を言いながら仕事をしています.その仕事,断ればよかったんですよね.正確には断れれば,でしょうか.「できない」と言えずに引き受ける場合と予見が甘く後の祭りといった場合があると思います.どちらも依頼者よりも引き受ける自分の問題のような気がします.年齢を重ね,自分の能力や許容量を自覚するようになってきても,そして何度か苦い経験をしても,後でおろおろ,いらいらすることを私は繰り返しています.ストレスマネジメントといった英国の本をみると,自分の判断力に自信がない,人から好かれたい気持ちが強い,自分の限界や可能性について明確に理解していないなど,やはり「NOと言えない」人の問題として手厳しいことが書いてあります.
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