書評
母の本と子供の本
松本 一郎
pp.37-39
発行日 1957年9月10日
Published Date 1957/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201488
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この夏,東京神田の中央大学講堂で「日本母親大会」が盛大にひらかれた.今年で第三回である.日本じゆうのお母さんが,子供の幸福のために,女としての,母としての,生活をより良くするために真摯な討論を数日にわたつて交わされたわけだが,聞くところによると今年の母親大会は今までとちがつて,ずつとオトナになつたということである.ヒステリツクにわめき叫ぶようなひと幕はみられず,運動が地につき,深く冷静にいろいろの問題点をほりさげようとするようになつたということである.感激にウチふるえ,わめき叫ぶというのは,見方によれば女性の純粋性をよくあらわしているともいえるが,しかしヒステリー性のあらわれであり,客観性がないと今まで批判されがちだつた折から,これは結構な現象だと思う.いいかえれば,生活をじつくりとみつめる眼がそなわつてきたということでもあろう.
ところで普段はものを考えるヒマもないほど忙しさに追われている母親が,ふと落着いたわずかの時間を得て,自分のまわりを見廻すと,そこには,このままでいいのかしらんと思われる矛盾や,不安なことがらがいくらでも見出されるものだ.そうして感じた矛盾や不安を,誰かに訴え,お互いに相談し,そして解決してゆきたいというのは皆の偽らざる心情である.母親大会に出席してそれを訴えるという手段もあるだろう.しかし大会に出られないお母さん方も沢山いる.
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