特集 上手な話し方
合いづちの打ち方
德川 夢声
pp.82-83
発行日 1957年5月10日
Published Date 1957/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201413
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あいづちの打ち方は広くいうと対話のし方,つまり相手がある調子で話す,こつちもそのリズムに合うリズムで話す事である.
話を聞いていて,熱心に聞いている.面白く聞いているという気持の表現をあいづちに表わすのである.昨日も若い新聞記者が,インタビユーに来た.インタビユーは聞いているものだから,あいづちを打たなければならない.ところが,その記者のあいづちの打ち方が全く下手,ふん,ふんと鼻であいづちを打つている.上の者が下の者にいうようなあいづちなんだな,うん,うんというような.なにも尊敬しなくてもいいが,こちらは老人,向うは若いんだから,ふん,ふんというのはいけない.早いはなしが,会社の課長が,部下の報告を聞いているようなんだ.文字には表わしにくいんですがね.少し鼻にかかつても良いから,口をあいて,ハイとかハアーとか云つた方がよい.言葉になると,その記者,「その時,どうなさいましたか」等と丁寧なんだ.しかしあいづちになるとふん,ふんとなる.ここにあいづちのむずかしさがある.
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