今月の言葉
二つの記事によせて
pp.9
発行日 1956年11月10日
Published Date 1956/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201291
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最近新聞をよんでいて,心をひいた,二つの記事を考えてみたい.その一つは――
早稲田大学の学生の問題がある.それはこうだ.早稲田大学とアメリカのミシガン大学との間に,教授を交換する話が成立して,近くアメリカから2名の教授が赴任する段取りになつた.ところがこれを知つた早稲田大学の学生諸君は,アメリカから教授を迎えることをこころよしとせず,これに反対して,何とアメリカ大使館へ問題をもちこもうとしてことを起し,勿論大使館側のとりあげるところではなく,その門前で,警備隊の人人とみにくい争いをひきおこし人.其の反対の理由は,「伝統を誇るわが早稲田大学は紅毛へき眼の師の教えを受ける必要を全くみとめない.政治的圧力によるおしつけ教授は絶対にうけいれられない」というのだそうだが,何とも馬鹿げた話で,おどろいてしまつた.外国との交換教授を政治的圧力と理解するのもひどく乱暴で,かつひねくれている.或新聞が評して曰く「アメリカからだからことわるが,ソ連からだつたら大歓迎するのか」といつていたが,若しそんなところに真意がありとすれば,早稲田大学の卒業生に日本の将来はあづけられない.否そこまでのものはないとしても了見のせまい,かたくなな考え感情を直ちに行動に移すような成長しない考え方の若人は寒心にたえない.
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