保健婦鞄とともに
結核診療所の窓口から
竹村 宏子
pp.6-8
発行日 1956年7月10日
Published Date 1956/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201226
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△月△日
急に陽ざしが烈しくなり,白いカーテンの合間から机一杯にカンカ照ンとりつける。じつと耳を傾けると,レントゲン写真を読んで患者に説明する医師の言葉が,自分自身に云われているように響く.「ホラ,ここがこんなに悪くなつて……」と手で指しているであろうその辺りの胸がチクチク痛む思いだ.
又此処に「結核患者」の大きな荷物を背負わされた人が,食べていくのさえ苦しい社会の中にふえてゆく.私はすぐカルテに目を落した.健康保険に加入していないと思われる小さな工場のプレス女工である.数年前より御主人は行方不明だという.
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