特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
最近の中耳炎について
高原 滋夫
1
1岡山大学医学部
pp.139-145
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201196
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中耳炎と云えば昔は屡々脳膜炎や脳膿瘍の様な重篤な疾患を招来するものとして一般から大いに恐れられていたものであつたが,近年の化学薬剤(サルファ剤の類)抗生物質(ペニシリン,ストレプトマイシンの類)の普及は此等の危懼を一掃せしめ,我々の中耳炎に対する気持を全く変革せしめた感がある.即ち夫等薬剤を早期に適切に応用すれば何等重症な合併症を見る事無く中耳炎の多くが頓挫的に治癒に向うに至つた事は洵に悦びに堪えない所である.然しその反面,夫等薬剤の効果を過信するの余り,往々にして急性中耳炎が不完全な治癒の侭に葬り去られ,之が慢性中耳炎或は耳管炎に移行する頻度の多くなつた事は亦警戒を要する所であろう.
筆者は先ず耳の解剖と音感受の生理を簡単に記し,次で中耳の慢性疾患の大要に就て述べたい.
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