今月の主題 痛みとその対策
本態のはっきりしない痛み
神経痛
佐々木 智也
1
1東大・保健センター
pp.614-615
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206547
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日本人の会話の中や新聞記事に「神経痛」なる言葉がしばしば出て来る.“神経痛のために老人が逃げ遅れて火事で焼死した”とか,“私は神経痛で膝が十分に曲がらないので正座できないから失礼する”とか,この方面を専門とする者にとっては首をかしげたくなることが多い.その原因を遡って考えてみると,神経痛という表現を医師がまことに便利なものとして使用し,時には治療効果があがらない場合や,原因を探す努力をしない場合のexcuseにも利用してきたことが原因なのであろう.一方,好意的にみれば,神経痛と称する症候がそもそも何であるのか,大学では良く教えてもくれなかったのであろうから,医師に悪意はないともいえよう.神経痛の説明を求められると,筆者は何となく寒々とした気持ちになってしまう.
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