今月の言葉
真実をたしかめる
pp.5
発行日 1956年3月10日
Published Date 1956/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201129
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1955年の秋,中央移動検事局とクラスノヤルスク地方裁判所の係官達は,きわめて異常な事件を取扱つた.30年程前に死んだ人の死因をたしかめるという仕事である.係官達は,数千粁空をとび,北極海の氷上に着陸し,それから小舟で河口をすぎ,あとは徒歩で無人のツンドラ地帯を,遠く昔の事件の現場に向つた.この遠征は,独創的な北極探検家ニキフオル・ペーギチエフの死の迷を解く為に行われた.ペーギチエフは,1927年5月・北極狐を追つて狩猟の途中,ふいに消えてなくなつたのであつた.
猟人達は,彼が壊血病で倒れたので,現地に埋葬したと報告した.併し又一方,仲間の猟人が,欲にかられて彼を殺したのを,他の人々は共犯の容疑をおそれてかくしているのだとも噂がたつた.
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