講座
分母の重要性をめぐつて—統計の生きた使い方(その18)
平山 雄
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.37-41
発行日 1955年12月10日
Published Date 1955/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201076
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統計を見たら先づ「どの様な集団を分母にして作られたものであるかを考えて見ることが是非必要である」とくり返し強調してきたつもりであるが,その必要性を示す恰好の資料が手もとに入つたのでそれを御紹介して見よう.
第1図及び第3図は,それぞれアメリカのマサチュセツツ州の一都市に於ける交通事故統計であるが,第1図は,曜日別観察,第3図は,1日のうちの時間別観察で,棒図の高さは,事故件数を示している.この二つの図から見ると,自動車事故は1週間のうちでは土曜日に,1日のうちでは,午後4時に最も多い事が分る.問題はこれからである.ここで次の様な,疑問が自然と浮んでくるようならしめたものである.土曜日に或は午後4時に自動車事故の多いのは,この時に道路を走る自動車数が最も多い為ではないだろうか.実際は果してどうであろうか.そこで,第2図及び第4図を眺めて見よう.この二つの図はそれぞれ道路上を走る自動庫数を示す統計である.先ず第3図であるが,曜日別に見た自動車数は日曜に著しく少ないほかは大体一定している.週末には確かに多くなつているが,金曜日の方が土曜日よりもかえつて交通量の多い事が注目される.自動車事故の件数は第1図の様に,金曜に比べ土曜日に遙かに多いのであるから,第1図と第3図の両方を睨み合せると土曜日に頻発する自動車事故は交通量以外によるものと推定される.
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