講座
結核患者の栄養指導—(1)その原則
横田 英夫
1
1国立東京療養所
pp.40-43
発行日 1955年10月10日
Published Date 1955/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201039
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化学療法や外科療法が目覚ましい発達を遂げた今日でも,昔ながらの大気,安静,栄養療法が結核治療の根本であると,繰返し主張されて来た.それにも拘わらず結核治療にたずさわる臨床医家の多くも,又患者の側でも之等の療法についてはあまり関心を払わず,ともすれば等閑視されがちである.それは化学療法や外科療法が結核の治療に決定的な力を有しているのに反し,大気,安静,栄養療法だけでは結核の病状を好転せしむるのに役立つだけで,それのみで治癒の段階迄もつて行くことが困難であるからであろう.然し如何に化学療法や外科療法が強力で決定的な力を有しているとは言え,それは大気,安静,栄養療法が理想的な状態で行われている場合に始めて力を発揮出来るのである.例えて言えばストレプトマイシンやヒドラジドの抗結核剤が如何に強力であつても,単独使用では実力を発揮出来ないのに,パスの協力を得て始めて効果をあげ得るのと似ている.大気,安静,栄養療法は恰度化学療法に於けるパスの役割を果していると言えよう.
それでは結核の栄養療法は如何にあるべきかと言えば,糖尿病や腎炎の場合のように,与えていけないという物はない.結核は慢性の消耗性の熱性疾患であるから,栄養豊富な食餌をなるべく沢山与えるという一語に尽きる.
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