I 保健婦鞄とともに
「ある結核患者の死」を読んで
山崎 千春
1
1都立渋谷保雄所
pp.12-14
発行日 1955年10月10日
Published Date 1955/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201036
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関係機関への呼びかけを
疾病と失業,貧困の悪循環を切るすべもなく,只一つの望みである結核ではないのだ,という言葉を求めて保健所を訪ずれたこの病者は,苛酷なる宣言により、望みは破られ,打撃の大きさに堪えられず死期を早めてしまつたという事であるが,現行の社会保障制度を批難する前に保健婦として反省しなければならないことは,
1.社会悪の総てが社会制度の欠陥に起因するもので,何とも致し方がないのだ,という考え方をもつている点,
2.事例の環境の観察(病歴,家族歴,社会歴等の聴取)が不充分か,これが充分だつたとすれば,判断が間違っていた点,及び患者の心理的要求を無視していた点,
3.患者の外見の哀れさに圧倒されて,基本的な取扱いを忘れ,表面的行動に終つてしまつた点がこの事例を失敗に至らせたものと思われる.
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