映画
赤と黒—Le Rouge et Le Noir イーストマンカラー総天然色
pp.40-41
発行日 1954年12月10日
Published Date 1954/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200862
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「赤と黒」の題名に関しては古来さまざまの解釈が行われており,或る者は「赤」を以て主人公ジュリアン・ソレルの情熱とし,あるものは軍隊の一員としての苛烈な生活を意味するものであるとし,「黒」は当時の社会の底を流れていた暗い世相を示すものであるとも言われ,あるいは「僧服」を指すものともされている.また中には「黒」にも「赤」にも何等これといつた意味はなく,単に言葉の調子からつけた題名であると見るものもあり,更には「貧富」「幸,不幸」を意味するとちがつた解釈をする.
スタンダールがこの小説を書いたのは1830年のことであつて,齢50才に近い頃の作品であるから内容形式ともに作者の名を世に遣すにふさわしい作であつたことは言うまでもない.といつても作者自身の経歴もさることながら,当時の傾向として作品の脊後には時代の歴史がそのままの姿で顔を出してくるのでヨーロッパのそれも特にフランス大革命から起りナポレオンの活躍を通じ19世紀後半に至るまでの歴史に通瞭していないと甚だ難解な節もあり,また興味を減殺されることがすくなくないきらいがある.スタンダールの「赤と黒」はあえて文学を愛好すると否とにかかわらず大ていの青年男女が一度はひもとく書物であろう.作者のスタンダールは本名をマリー・アンリ・ベイルと称したが,かねてから私淑していたドイツの考古学者ヴインケルマンの生地スタンダールの地名をとつて筆名としたのである.
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