講座
先天性梅毒と小兒の健康
内藤 寿七郞
pp.23-26
発行日 1954年6月10日
Published Date 1954/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200750
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先天梅毒とは
先天梅毒は遺伝ではない.先天梅毒と云えば遺伝ということを想起しやすい.しかし先天性とはいえこれは胎内での感染であつて,精子及び卵が変化をうけて生ずるものではない.感染はいうまでもなく梅毒の母或いは梅毒の父→母→胎兒という徑路をとる.普通胎盤より臍静脉を通じて胎兒に伝わる.このことは先天梅毒兒の肝臓に梅毒の病源体であるトレポネーマパリーダが多く発見されることからも明らかである.
先天梅毒の場合病源体のトリポネーマパリーダは胎兒のどの器管に多くみられるかについて色々の研究があるが前述の如く肝臓に一番多いことは異論がない.その他,脾淋巴腺或いは肺,膵,副腎,長管骨骨髓,消化器,腸間膜,心臓,甲状腺,膀胱,睾丸,副睾丸更に大腦及び小腦という体の殆んど全部にわたつて侵入していて時として長期無症状のまま組織の中に塊をなして潜伏状態をしていると云われるから,当初は殆んど症状を現わさないが後になつて各科各様の症状を現わして来るのであるから油断ならない.自己で求めたものでなく兩親のためにこのようなはめになつた乳兒こそ気の毒と云う外はないが吾々はできるだけこの災厄を取除き又其の障碍の軽減を企図することに努力しなければならないわけである.
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