特集 母の日のために
先天梅毒兒は治る
中村 兼次
1
1関東遞信病院小児科
pp.10-13
発行日 1954年5月1日
Published Date 1954/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200598
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1.まえがき
梅毒が忌わしい業病であつたことはコロンブスの大陸発見このかたつい昨今までのことである.ここ数年の間に梅毒の治療と診断について驚くべき革命がもたらされた結果,梅毒は今日ではもつとも治り易い病気の一つとなりつつある.梅毒の診断にはその固有の臨牀症状による他,血清反応(ワツセルマン氏反応)の検査が補助診断法として絶対不可缺のものであるが,この血清反応は従来の方法によると鋭敏度と特異度という点にとかく不十分のうらみがあり,眞に梅毒であつても陰性(鋭敏度による)にでたり,又梅毒でない病気にも陽性(特異度)になつたりして診断に惱まされる場合が少数ながらあつたのであるが.近時カルヂオライピン・レシチン法が完成されて,この缺点の大部分は除去されるようになつた.又治療の面では,ペニシリンを始めとして幾多の新しい抗生物質の登場をみるにおよび,治療上の進歩は実に驚嘆に値する.梅毒の中でも先天梅毒は難治とされていたが,今日早期に合理的治療を行えば殆ど100%の治癒卒をみるに至つている.以下主として胎兒梅毒,小兒梅毒に分けて記述する.
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