音楽講座
メロディーの泉
山本 金雄
1
1NHK合唱団
pp.57-59
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200739
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1.歌劇「ウイリアムテル」序曲
「ウイリアムテル」はイタリア人ロツシー二の作つた4幕5場のオペラで場所をスイスにとり時代は世紀で出場入物はウイリアムテル(バス)アーノルド(テノール)ゲスラースイス州長官(バリトン)ウイリアムテル妻(ソプラノ)息子ジエミー(ソプラノ)其の他農民,騎士等で,筋は皆さん余りにもよく御存知のウイリアムテルが自分の息子ジエミーの頭の上のリンゴを一矢で射落す筋で,1829年パリーで初演されましたが,何と上演時間5時間に及ぶオペラで同じ作曲家の作になる歌劇「セヴイリアの理髪師」と共に有名であるが,現在ではオペラの上演される事は非常に珍しいが序曲を上演されない事はない位広く演奏される名曲であります.この序曲は普通の序曲と違い,全くの描写音樂で,歌劇の内容と密接な関係をもつて居ります.4つの部分からなり1「夜明け」2「嵐」3「牧歌」4「スイス独立軍の行進」に分れ,11分の演奏時間を要する「夜明け」はアルプスの連峰の上に登る森嚴な日の出の壮観さを表わしたもので,あのすばらしいチェロのメロディーで始まり静かな短音階の4分の3拍子でチェロとコントラバスと太鼓だけで,その静かな夜明けを表現している.「嵐」は夜明けの部分に引續いて急に速く2分の2拍子で雷雨と疾風の描写に眞にせまるものがあり太鼓の音で遠雷を表しフルートの音で雷雨の後の雨滴を表現している.
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