扉
足下を掘れ,そこに泉がある
青木 秀夫
1
1山口大学医学部脳神経外科
pp.437-438
発行日 1981年3月10日
Published Date 1981/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201308
- 有料閲覧
- 文献概要
"足下を掘れ,そこに泉がある"とは古い格言で,以前に本欄にも書いたことがある.哲学者の天野貞祐先生が京都大学におられた当時,昭和10年代中頃の数年間,私の在学していた高等学校に関係しておられたことがあった.毎週のようにおいでになって,よく言われた言葉でもあったので,特に印象に残っている.日常の診療の時でも,あるいは実験の時でも,常に心に留めておきたい言葉と思う.
さて,これも相当古いことであるが,昭和30年代に教室から「脳室灌流冷却」という題で,シリーズとして脳神経外科学会や精神神経学会に報告していたことがある.この仕事が始まったのが昭和30年であった.当時われわれの大学は県立医科大学で,建物はほとんど全部木造モルタルの二階建,廊下は波打ち,手術室には蟹や蛙が出没するといった有様で,古い大学の医学部の風格はなく,また最近の新しい医科大学の立派な建物からは想像もできないような代物であった.はじめのテーマが低体温時の髄液循環で,犬をつかって実験しようということになったが,なにぶん教室ができて日も浅く,動物実験などは全く行っていない状態だったので,犬を飼う場所もなかった.そこで横山助教授(現熊本大学第一外科教授)以下全員で材木や板を集め,犬小屋を造った.犬の餌は残飯で,男子禁制の看護婦宿舎の食堂に入り込んで残飯を集めた.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.