特集 結核問題の展望
—簡單な紹介—結核予防法
宮島 剛
1
1厚生省結核予防課
pp.42-48
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200735
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公衆衛生行政や社会福祉行政の中でも,特に変転のあとの激しいのは,これからお話しようとする結核行政であるといえます.結核に関する行政の歴史は,そう新しいものではありません.結核に関する法律は,大正8年旧「結核予防法」として制定されております.勿論その前から結核対策は国によつてとり上げられていました.その長い歴史の中で,全青少年,乳幼兒に対する体の検査の実施を規定した国民体力法(昭和15年)や30才未満の全国民に対するBCG接種を規定した予防接種法(昭和23年)その他労仂基準法,学校教育法,国家公務員法等の健康診断に関する法制化,そして昭和26年の,全く体系づけられ,綜合された結核対策を法制化した結核予防法出現と,極めて起伏に富み,春秋に富んだ変貌をしながらこの行政は日々進展してゆきます.結核行政は何故このように,気ぜわしく--と言われるほど息づくのでしよう? 一つには結核という疾病が,その慘禍を国民の肉体と精神と経済との上に,その蔓延(患者数292万)とともに,限りない負担と苦澁と損失とを涯しなく及ぼしていることのために,いわゆる社会病として,結核問題を拔きにして国の施策或は社会問題が論ぜられぬ程国家社会と結びついているため,国家社会の息づきとともに結核問題が息づかねばならぬからです.
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