講座
後産期出血の簡單なる手技
川添 正道
pp.22-23
発行日 1952年4月1日
Published Date 1952/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200080
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後産期出血に對する處置は十數年前迄は非常に重要視せられ,私が慶應病院在職の頃は其症例に接すること頗る多く重症例には子宮の膣上部切斷を敢行せしことさえあり。彼の所謂"モンブルグ"止血帶,"ゼールト"其他の大動脈壓迫器の使用例報告も多く,其他の處置も非常に多く記載せられるは諸姉の知らるゝ所なり。然るに近年に至り其重症性に遭遇する事尠きが如く,學會等に於ける報告も稀有なるに至れり。蓋し其原因たるは一般又は局所の處置は勿論,産科技術の進歩に基因するなる可く欣ばしき現象なりと謂うべし。然れども輕症例と雖も胎兒娩出後間もなく出血を起し,出血量普通量たる200c.c.を越え500c.c或はそれ以上に達し狼狽せしむることあり,私は以前より後産期出血の多くは子宮の全部又は一部の收縮不全に由るものにして,此の際子宮體に貧血を起さしむる時急速に子宮はの收縮を惹起し止血せしむるの事實を經驗し(當時私の教室に於て織田良一博士がモンブルグ止血帶の實驗的研究を基礎として,)たるを以て,當時は子宮體を後腹壁に壓迫する事に由り止血の目的を達したる事あり(私の産科學に記載す)。爾來其法を行いしが不完全にして,時として反對の結果を來し(靜脈性鬱血の爲か)たることあり。
私が川添病院經營の當時より此如き際子宮體を強く止血する時は,直に止血の目的を達する事を認めためり。
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