職場報告
開拓地の保健婦について
小野寺 サン子
1
1農林省営農課
pp.24-26
発行日 1954年4月10日
Published Date 1954/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200715
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開拓地に保健婦が設置されたのは,戰後の国内開拓事業が始まつてからである.即ち終戰直後の極度の食糧欠乏対策と戰災都市の失業者,海外引揚者,復員軍人等の救済策とを兼ねて発足したものである.昭和20年11月に緊急開拓事業実施要領が閣議決定をみたのでこれに基き入植者の厚生施設の一環として設置されたものである.爾来開拓事業は8年の歴史の中に幾多の迂余曲折を経ながらも,昭和27年度の営農実績調査によれば,入植戸数13万5000戸,人口61万9000人,増反戸数66万戸で,未墾地取得面績126万町歩,開墾面積は47万町歩で四国4県の約2倍に相当するものである.昭和26年度主要食糧生産高302万石(玄米換算)に達している.
さて,以上の入植者によつて拓かれた土地は概して僻遠の地にあり,交通不便,医療機関から隔絶されている.医療機関までの距離別入殖現在戸数の比率をみると(表1)の通りであるが,開拓地は1里未満と云つても平担地でなく,地勢的に山腹に位する上に道路が完備されていないので,実際に応急患者が出た場合等は,医師の来診を乞うことも困難なために戸板にのせて山を下つて診察を受けに行くという現状である.そこで医療機関に惠まれない開拓地に,保健婦を昭和22年度より設置して,現在全国で289名の保健婦が現地に駐在している.保健婦1名の受持戸数は,平均105戸,組合数は平均4組合となつている.
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