生活ノートから
四国にて
松谷 みよ子
pp.68-69
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204411
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土佐で,檮原村へお連れしたいですね。といわれた。土佐の檮原といえば四国のチベットといわれたほど開けないところだという。なにしろ檮原のおばあさんが東京へでて,駅の階段をのぼったところで,べったりと坐りこみ,まあ何様がお祭りしてあるのか,大変な参詣人でといって手を合せて拝んだという,昔ばなしのような実話があるというのだから。
しかし檮原はまた,歴史に残る土地でもある。幕末から維新にかけて,村をあげての勤王の土地柄であり,十指にあまる志士を輩出,維新の改革に大きい役割を果したという。かの坂本竜馬もこの志士たちと交流し,幾度となくここで協議をこらしているそうだ。それだけでも興味深いのだが,その人が私を連れていきたいとったのは,村はずれの茶堂をみせたいというのだった。村はつれにみんなが寄ってお茶を飲むところがあるという。旅人もそこで一服するという。あれはいいなという話だった。
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