講座
ケースワーカーとは何か
田村 きみ
1
1日赤本社
pp.19-25
発行日 1953年12月10日
Published Date 1953/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200644
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W夫人の話
しばらく前に,若いW夫人がかなり困つて赤十字の本社を訪れて来た.W夫人は数ヵ月前に出港した船の米兵の妻で,母親と弟と1年6ヵ月の赤ん坊と一緒に住んでいた.そして2番目の赤ん坊を妊娠している.夫からは出港以来何等の経済的な支援なく(夫が再び日本に帰つて来る望みも殆んどなかつた。)4人の家族は弟のサラリーの範囲内で細々とくらしをたてていた.彼女が赤十字本社を訪れた来意は,妊娠8ヵ月の身体でありながら自分も仂いて家庭の経済の不足を補足せねばならず,子供を生んでも年老いた母親では2人の子供の面倒をみることができないので,子供を堕胎してもらいたいということであつた.そこで,現行の法律では,既に3人以上の子供を持つている既婚者が,收入不足であるか,生活扶助を受けているようなときは8ヵ月未満であれば妊娠中絶出来ることを説明したら,W夫人は自分の場合は人工堕胎が不可能であることを答易に了解したので,本社産院の医務社会事業係のところへ行つてよく事情を話して相談するようにと云つて,産院へ紹介してやつた.ここで2つの解決策が提案された.第1の方法は,彼女が経済的に独して子供を迎えに来れるようになるまで,1ヵ年間は産院で預つてもらえることで,もう一つの方法は生れた子供を養子にやることである.
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