隨筆
夏の北海道に旅して
齋藤 潔
1
1公衆衞生院
pp.28-30
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200626
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青森と凾館の間の連絡船の族客運行が一時停止されて,北海道と本土との交通に支障が起つた.海岸に機雷が浮遊したり,他国の監督船に漁民の生活がおびやかされている現状は,何としても気が晴れない.連絡船の乘客は甲板に出て,はるか北方を眺めて憂うつ気に見えた.筆者の北海道行きは今回で3回目であるが,今回ほど敗戰の慘めさを感じたことはない.この暗雲が漂うかに見えた北海道も,渡つて見れば案外住民は落ちついてくつたくもなく仂いている.本土で想像したり,地図を開いて見て感ずるほどには緊迫したようなこともないのは嬉しかつた.
札幌の町は道路が整然として,街路樹が立ち並んでいる.商家の品物も年毎に賑やかに見え,復興も著々と進んでいるが,道路の舖装は著しく荒廃しているようである.筆者は東京を離れると,必ず保健所を見学することにしている.保健所を訪問すれば,そこの衛生状態や民情を最もよく知ることができて樂しいものであり又そこで公衆衛生院の卒業生にも逢える樂しみもあるからである
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