海外のはなし
スターリンの病歴
谷 又昭
pp.57-58
発行日 1953年7月10日
Published Date 1953/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200559
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ヨゼフ・スターリンの主治医達は彼が動脈硬化をきたし,また高血圧であることを知つていた.その徴候は長期に亘つてあらわれていたのでその點は明白なことであつた.したがつて医師達のすることゝ云えば過勞に対して警告する位のことを除けばなすべきことはそう多くはなかつた.つい最近發見されたヘキサメソニウムやアプレソリンのような藥品が一時的な救濟のために何人かの患者に用いられているが,それも單にそれだけのものであるに過ぎない.
動脈硬化とか,高血圧の場合,全く普通なように出血は何の前ぶれもなく起きた.スターリンが重大な会議をしていようと,トランプで遊んでいようとあるいは寝ていようとそういうことはこの病気の場合問題ではなかつた.彼の腦の動脈はパンクする自轉車のタイヤのように爆發した.過度の血圧にもうそれ以上は抗することができなかつたからである.血液は灰白質の腦細胞の中に流れ,腦の中に詰め込まれるとそれはもう使われることなく固まりはじめてしまつた.
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