- 文献概要
樣々の想い出の中でも,常にたのしく,なつかしく思いを誘うのは旅行の想い出です。旅行のたのしさを最初に味つたのは,小学校時代の遠足で,これは旅行そのものよりも,澤山の友達と,しらない場所で,珍らしいものをみたり,遊んだり,もつていつたお菓子を分け合つてたべたり,お辨当をひらいたりすることに,よりたのしさを味つていたように思えます。遠足の前の日,家にあるものでは滿足出来ず,あれ,これ,と好みのお菓子や果物を買いととのえて準備するたのしさは,旅行そのものよりも更に胸おどらせるものがあつたのを覺えています。それが,成人するにつれ旅行の味も段々と變つて来て,多勢よりも気の合つた同志数人のレクリエーション的小旅行,親兄弟との水入らずの墓參旅行,或は又,時としてはたつた1人で,靜かに旅情を味うしんみりした旅行など,いろいろの形熊がのぞまれるようになります。
仕事の関係で,比較的旅行をする機会の多い私は,もともと好きである旅行が,一そう親めるようにたつて來ました。
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