東西詞華集
—カルル・ゲーロツクS・S・S同人訳—花薔薇
長谷川 泉
pp.38-39
発行日 1952年10月10日
Published Date 1952/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200379
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訳詩集「於母影」が出たのは明治22年「国民之友」第5巻第58号の夏期附録「藻塩草」のなかである。訳者はS・S・S同人。これが世に出た時,世人はS・S・Sを一人の匿名と思い,和漢英独を自由自在に消化した訳出に舌を巻いたという。あにはからんや,S・S・Sは一人の匿名ではなく,新声社のイニシヤルであつたのである。
新声社の中核をなしたのは森鴎外そして市村瓉次郎,井上通泰,落合直文,それに鴎外の妹小金井喜美子が加わつたものであつた。これらのメンバーは時々集つては文学を論じ,詩歌をつくつたが,その会合を新声社と名づけたのである。「於母影」はこのようにして出来た訳詩を新声社の頭文字をとつて送つたもので17篇のすぐれた訳詩は文字の雕琢とフレッシユな感覚で人の耳目を饗動させるに足るものであつた。S・S・Sの角笛が吹きならされ,新体詩の上に大きな足跡を印した所以である。
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