講座
医療社会事業(其の2)
淺賀 ふさ
1
1厚生省児童局企画課
pp.28-31
発行日 1952年10月10日
Published Date 1952/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200376
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『川邊に連れて行つても,水を飲もうとしない馬をどうしよう』
小兒麻痺におかされて永い病院生活の後,家に帰つていた17娘,年令とは凡そそぐわない婆さんじみた姿,髪は引つつめにして,顔に化粧するではなし,服装は彼女のお母さんでも着そうなものをつけている。眼鏡をかけた眼,肥満した体,ダブルブレースをつけた脚は,松葉杖をつきながら必要以上に歩きにくそうに運んで居た。これは肥満のためでもあつたが,医療社会事業職員が彼女を援助しなければならなかつた心理的な問題の一つの現われでゞもあつたのだ。彼女は職業補導を受ける年令にあつたので,医師の診査を受けに来たのであつた。著しい肥満に気のついた医師が運動をどの位するかと問うと,彼女は悲しそうに学校へは行つていないこと,めまいがしたり,気絶しそうなこともあること,目が惡くて本がよく読めないことなどを訴えた。医師は直ちに彼女に社会心理的問題のあることを認めて,医療社会事業部の援助を求めて来た。ケースワーカーの所見は次の如きものであつた。
患者は経済的には困ることのない,そして愛情に充ちた父母と,結婚して別の處に一家を構えている兄とをもつて居た。父母は身体障害をもつ娘の幸福のためあらゆる努力を惜しまなかつたし,彼女の一生困ることのないようにと貯蓄をしようとして居た。
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