インタビュー
井上なつゑ女史訪問記
地引 喜太郞
pp.23-26
発行日 1952年8月10日
Published Date 1952/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200335
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「日本の公衆衞生の状態を見たり聞いたりしていますと,いまの保健婦の仕事が何んなに大変なものであるかハツキリと分りますね。労働過重だと思うんですがそれでもまあ保健所に勤めている保健婦は,定員が足りないとはいいながらも,何うやら定員に近くたつて来ていますからそれほどのことはないと思うんです。大変なのは国保の保健婦で,各家庭と直接につながりを持つていますから,単に定員不足だというだけの問題ではなくていろいろと考えなければならない課題が含まれていると思います」
参議員議員会館の応接室の一隅であつた。丸テエブルをはさんで,私は井上女史と対い合つていたのであるが,女史が喋りはじめると同時に,だんだん姿勢が崩れて行つた。首を突き出すようにして前のめりの姿勢になつて行つたのである。私達の間に置かれていたテエブルは直径1メートルぐらいの小さなテエブルなのであつたが,それだけの間隔が邪魔になつて仕方がなかつた。つまり,その程度に女史の声が低かつたというわけで,この声の低さには,ちよつと画喰ったのである。議員というものは,喋ることが商売なのであるし,声量のゆたかなことは自他共に許しているものだとばかり信じていたから,女史のか細い声にはビツクリした。
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