世界の波
搖藍から墓場まで—イギリスの社会保障制度
末松 満
pp.30-31
発行日 1952年3月10日
Published Date 1952/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200246
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イギリス政府に招かれた我が国の5女史は1月下旬から2月へかけて相ついで帰朝した。私はそのみなさんにお会いしてあちらの話を伺がつたのだが,参議院議員である奥むめお女史は「日本の主婦ほどみじめな主婦はない」といい,家庭裁判所調停委員の田辺繁子夫人は奥女史の言葉に同感の上「未亡人は泣いていない」と語る。最高裁判所長官田中博士の夫人峰子女史は「兒童たちの幸福」を説いた。いずれも福祉国家を実現したイギリス労働党政府の社会政策が,いかに国民を安心立命の境地へまでみちびいたかの報告である。
およそイギリス人として生れた以上は,赤坊から老人まで,いわゆる搖藍から墓場まで,誰一人生活の不安はない。病気をすれば一切が無料,失業しても未亡人となつても,生活するだけの年金はもらえる。老いて孤独ならば大威張りで養老院のベルを押せばよい。だから貧困ゆえの自殺や心中は,イギリスのどんな新聞にも記事になつたことはない。
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