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讀書室開設に際して
石垣 純二
pp.33-35
発行日 1952年1月10日
Published Date 1952/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200217
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讀書室開設に際して--12月號で伊藤さんの告白を拜見しました。あのように生氣溌刺としている伊藤さんでも,この正直な弱音があるかと思つて意外にも感じ,又同情もしました。しかし伊藤さんには,ともかく苦しみを打明ける胸があり,優しく慰めてくれる力強い手があるから,まだましとせねばなりますまい。しかし全國の大多數の保健婦諸姉は,孤獨で,苦しく辛い任務にはげんで,疲れ果てゝ歸つたところに何が待つているでしよう。日に燒けた襖,冷い疊,小さな机,少しばかりの花,その室でたつた1人,つかれきつた體を,少しお行儀わるく憩わせている保健婦,そうした女性を1人想像して,私はこの1年間,讀書案内を書きつゞけてみようと考えたのです。讀書というものが,余りにも,わびしく乾きゝつた世界で,どんなに大きな救いであるかを,戰線で身にしみて悟つた私ですから,この試みが成功しますように祈りつゝ。
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