主張
財政と國民生活
遠藤 湘吉
1,2
1東大
2社會科學研究所
pp.6-10
発行日 1951年12月10日
Published Date 1951/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200188
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「大砲かバターか」の岐路に立つてイギリス勞働黨は世界に誇る社會保障制度の推進を,ついに放棄しなければならなかつた。しかしこれはたゞにイギリスだけのことではない。フランスにしろドイツにしろ,そしてまたある程度はアメリカにしろ,總じて世界の大部分の國が悩みとしているところである。わが國では,自由黨が内閣を組織するようになつてからは,減税というのが一枚看板といつてよいほど,聲高く叫ばれている。誰しも税が少いにこしたことはないが,世界の國々の悩みをよそにして,はたして日本だけがそういう惠みに浴しうるのだろうか。減税しろという方も,やつてみせるぞという方もこのような疑問をどこまで考えているのか,甚だ疑わしいのである。もし,そういう反省もなく,たゞ形だけは減税したといつても,實質的にはかえつて増税したと同樣の効果をもつこともありうるのである。だから簡單に税の輕重のみを云々することはきわめて不充分である。この點は,今後の日本財政が國民生活に及ぼす影響を考える場合に,とりわけ重要であるといわなければららない。
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