- 文献概要
久々にという言葉では言いつくせない程久し振り,10年もそれ以上も前に別れたきり,しかも其の間に一本の便りすら取り交わさなかつた古い友達が,突然訪ねて來てくれた時の感激は,よろこびとも,うれしさとも違つた別の感情,親しさとなつかしさと,更にそれに一種の感傷も加わつている……これが友情・心のつながりというものなのでしようか。「友あり遠方より來る。いざ,ともえをくみ交わさん」と,電車内の廣告でよんだのを覺えていますが,旅裝した鴨が,ネギを背負つているきれいな繪が人目をひくように上手に描れていました。
親にも,兄姉にも,伯母さんにも,從姉にも,先生にも,誰にも相談出來ないようなことが,長い生涯の中にはないとも限りません。そんな時,一番話し易く,相談にものつてくれ,よい知惠もわけてくれるのは友達だ,ということを,私は學生の頃からきいていたものでした。これは他の人達が役にたたないという意味ではなくて,結極,年齡も,環境も,其の他の條件も大體同じであるために,最も理解がよいという點から出發しているものと思われます。
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