講座
免疫
豊川 行平
1
1東京大學醫學部
pp.19-22
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200092
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一般に病原體が何かの形で生體内に入ると,その病原體に對する抵抗性が現われる。かかる現象を免疫といつている。血清學では,この概念を擴げて,生體に抗體をつくらせることを免疫と呼んでいる。
ある傳染病に對する免疫のなかで,その病氣に罹つた後に現われる免疫程強いものはない。例えば,麻疹は一度罹ると一生免疫の状態になる。餘談になるが,麻疹が子供の病氣であるというのも,それが原因なのである。つまり,子供の頃に凡ての人が麻疹を經過するために,成人に麻疹がみられないのである。一方先天的に成人が麻疹に對する抵抗性を持つているのでないことは,今迄麻疹のなかつた孤島に麻疹が持込まれると,成人も子供も同じように麻疹に罹ることからもわかる。例えば,北太平洋にFaroe島という孤島があるが,Faroe島で麻疹患者が最後に發生したのは1781年で,その後65年間麻疹の發生をみなかつた。ところが1846年デンマークのコペンハーゲンから麻疹が持込まれ,そのために大流行を起し,住民7782名中約6000名が罹患した。同じような例は,Fuji島にもみられている。この島では1875年まで麻疹はなかつたが,この島の王樣がこの島を英國に讓るため,シドニーを訪れ,調印後1875年同島に歸つたが,その際麻疹を持込んだ。そのため全島の住民15萬人が成人も子供も全部麻疹に罹つたという記録がある。
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