かぜひき・インフルエンザ・肺炎
治療
河邊 秀雄
1
1聖路加國際病院
pp.19-23
発行日 1951年2月10日
Published Date 1951/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200032
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「かぜひき」とインフルエンザ
「かぜひき」(Common cold)は極めて普通にある疾患で,季節の變り目冬季に多い。最近「かぜひき」の患者の咽頭洗滌液からインフルエンザヴィールスが證明された報告が外國,國内に見られる。そして「かぜひき」と云う項目は教科書の傳染病の項目に編入される樣になつた。しかしながら將來はどうか分らないが現在の技術を以てしては,所謂定型的と思われる「かぜひき」の患者のすべての者からインフルエンザヴィールスが證明出來ないし,又他方細菌性のものと考えられる場合もある。其の他寒冷にさらされてから數時間内で發症し微生物によると考え難く物理化學的原因によるのではないか,或はアレルギーと考えられる場合もないではない。鼻粘膜咽頭は平素多種類の微生物が澤山に常在する場所であるから,此の判定にはなかなか困難な場合が多い。現在のところでは「かぜひき」の發生病理は一元的なものと考えるにはまだ無理がある樣に考えられる。直接ヴィールスの證明,血中抗體價の上昇,赤血球凝集抑制試驗法(ハアースト氏試驗)等の檢索が行われる樣になつて,次第にこれ等の點が明らかにされつつある。「かぜひき」とインフルエンザの原因を一元的にヴィルースとする場合,何故前者では散發し後者では流行し,或る場合は世界的な流行にまでなるか,これには人間に於ける免疫の状態とか,ヴィールスの抗元の違い等が問題になるだろう。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.