特集 もっと生活の視点を
ハンデイを持つ人の道具を作り続けて—工業デザイナーの目で見た障害者福祉の現場
光野 有次
1
1重症心身障害児(者)施設「みさかえの園むつみの家」機器開発室
pp.352-358
発行日 1988年4月1日
Published Date 1988/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923125
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誰が障害者なのか
車椅子に乗っている人は障害者と呼ばれることが多いが,最近はハンディを持った人とも呼ばれたりする.しかし,彼らは1日24時間,四六時中障害者であったり,ハンディを持っていたりする人々なのであろうか.脊髄損傷で車椅子を利用している人と会議の席などで一緒になることが多いが,テーブル式の会議の席では何らハンディはない.そこに食事が持ち込まれても基本的にはハンディはない.ここで厳密に言えば若干のハンディは確かにある.例えば,大きなテーブルの中央にある料理を取りたいと思う時,車椅子に乗ったままでは届かないということもあったりして,「これもハンディだ」と冗談半分,(料理が限られている時には,半ば真剣に)言う人もたまにいるけど,今の日本では,そう根本的なハンディではなさそう.
では,どこでいつ彼らは障害者になるのだろうか.会議や食事の席を立ってトイレに行こうとした時,そのトイレの入口がもし車椅子が通れないほど狭かったり,入口に段差があったりする時に,彼らはとたんに身動きのとれないハンディキャプトに変身してしまう.
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