連載 水引き草の詩(うた)—ある看護教師の闘病記・6
岐路に立つ
藤原 宰江
1
1岡山県立短期大学看護科
pp.908-911
発行日 1988年9月1日
Published Date 1988/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922088
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わが家に帰る日
術後1か月,昭和62年1月16日に待望の退院許可を頂いた私は,その夜興奮してよく眠れなかった.3時過ぎてから少しまどろんだが,6時にはもう起き出して恒例となっている朝の散歩をした.今日で最後である.痛い足をかばいながら最上階まで上がり,16階のロビーを一巡して,M階まで全部階段利用で歩いて降りた.
いつも見慣れている風景なのに,今日の川崎医大の庭はことさら美しい.おきまりの席に腰を下ろして,待合ロビーが塞がり始めるまで,元気に泳ぎ回る鯉やにぎやかな鴨を,長い間眺めていた.鯉の泳ぎ方まで違うように思えたのは,無論気のせいである.
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