特集 ルチーンの医療処置を見直す
岐路に立つ日本のマタニティケア
ドリス・ヘア
1
,
新野 由子
Doris Haire
1
1アメリカ母子保健財団
1American Foundation for Maternal and Child Health
pp.303-310
発行日 1995年4月25日
Published Date 1995/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901225
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1971年,私は幸運にも,日本を訪ねる機会を得た。この初来日には,ニューヨーク市助産婦サービスのディレクターであるドロシア・ラングが同行し,私たちはともに,日本の女性たちが受けているマタニティケアに感銘した。病院でのお席でも,助産所のお産でも,女性たちの最も身近なつき添い者は助産婦であったし,正常な分娩には医療介入は非常に稀であった。こうした出産における好環境こそが,現在の日本人リーダーたちの成功に大きく貢献してきたと,私はしばしば考えたものである。だからこそ,最も最近(1991年)日本を訪れた時,多くの日本人産科医たちが欧米産科医療を追随しはじめている(彼らは,マタニティケアにおける医療介入に関して,欧米の産科医と同様な過ちを犯しているし,また安全性においても同様な仮定を立てている)ことに,私は大いに失望した。日本のマタニティケアはいま,分岐点に立っていると言える。日本の新生児死亡率(表1)や新生児罹患率は,その教育成果と同様に世界の羨望の的である。しかしながら,日本がもし欧米産科医療を,RCT(randomized controlled trials:無作為抽出法による対照研究)によってその危険性や利点を評価することなしにマタニティケアに組み込むことを続けたなら,こうした新生児の健康に関する輝かしいステータスは維持されないだろう。
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