特集 再び外来へ—看護の継続性を支えるもの
再び外来へ—患者を生活の視点で捉えるというものの……
河口 てる子
1
1東京大学大学院医学系研究科(博士課程)
pp.859-865
発行日 1988年9月1日
Published Date 1988/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922079
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生活を見つめるようになった2つの動機
数年の臨床経験の後,大学院(保健社会学教室)に入った動機は何であったのか.当時,内科で糖尿病等の慢性疾患指導をしていた私は,自分のしてきた指導に壁を感じていた.「結局,食事療法を守れない人は,いくらこちらが頑張っても大部分は守れないままになり,守れる人は,私たちが特に素晴らしい指導をしなくても,守り続けるのではないか(多少の例外はあるにしても)」と.
教育入院すれば確かに知識は増える.入院中は,病院管理なのだからコントロールも良くなる.退院後しばらくは効き目はあるだろう.けれど,3か月たち,6か月たてばどうなるか.食事は元の内容に近づいているのではないか.宴会や接待にもしっかり出,しっかり食べて,患者はすっかり会社人間に戻ってしまっているのではないか.数十年におよぶ糖尿病の経過の中で,数か月のコントロール良好期間など,どれ程の意味があろうか.家族を呼んで栄養指導を受けさせれば,調理者の協力は得られる.しかし,家庭の中で食事に関して,ごたごたともめることがしばしばあるのではないか.
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