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エイズ・パニック・シンドローム
熊倉 徹雄
1
1東京都立墨東病院神経科
pp.648
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922028
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1981年,アメリカでの世界初のエイズ患者報告以降,エイズ患者は急速に世界に蔓延し,エイズに対する不安や恐怖に人々は恐れおののくようになった.幸い,わが国ではエイズ患者は少なく,エイズは外国人や同性愛者にのみ感染するもので,エイズ騒動は「対岸の火事」とみなされてきた.しかし,1987年1月の「初の日本女性エイズ患者発生・死亡」の報道を契機に,わが国は一挙にエイズ・パニックに陥った.異性間性交,つまり通常のセックスで感染した風俗産業の女性エイズ患者発生のニュースにより,我々は「対岸の火事」の火の粉をわが身に浴びることになったのである.
厚生省など関係諸機関はただちにエイズ蔓延防止緊急体制をひき,東京都においても,急遽,エイズ相談窓口の開設,電話相談,抗体検査などを都立病院や保健所において取り組んだ.墨東病院でも1月22日からHIV抗体検査を実施したが,幸いにして抗体陽性者はいなかった.しかし,抗体陰性であるにもかかわらず,エイズに感染していると思い込み,深刻に悩む人が多いのが特徴的であった.我々はこれらの「思い込みエイズ」をエイズ・パニック・シンドロームと名付けた.
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