連載 西村かおるの訪問看護留学記—英国編・18
日本一時帰国物語(前編)
pp.616-619
発行日 1988年6月1日
Published Date 1988/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922022
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不吉な手紙
実は何を隠そう,私は日本に帰ったのだ.ワハハ.エンヤコラと日本から地ベタの旅で英国にたどり着いてから約1年と7か月.日本を恋しいと思うよりも,ほんとうにそんな国が存在するんかな,私の幻想なんじゃないか,などと,毎日日本からの手紙を受け取ったり,貿易摩擦の折,ラジオでジャパンという単語を聞かぬ日はないのに,あまりにも私の現実からは遠く,夢の国となっていたのだった.その国に突然帰ることになったのは,ある日送られてきた友人の手紙による.
「遠くにいるかおるに知らせることがいいか,どうか迷ったけれど……」という書き出しはいつもの親バカちゃんちきの手紙とは趣を異にし,何やら緊張させるものだった.で,我らのクラスメートの一人K子が虫垂炎の後,イレウスを起こし再手術をしたのだけれど,どうももう1回オペが必要らしい.本人は入院しているのだけれど,癌を疑っている,というものだった.
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