特集 ゆがむ母子関係と病む子供
母原病に悩む子どもたちの現状と看護接近
藤原 宰江
1
1岡山県立短期大学
pp.752-757
発行日 1983年7月1日
Published Date 1983/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919885
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‘母原病’という耳新しい病気が子どもの間に広がりつつある.読んで字のごとく‘母親が原因の病気’という意味で母原病と呼ばれるが1),この病気は20年ほど前はほとんど問題にならなかった.1955年を境として日本では驚異的な経済成長と都市化が進む一方,出生率が低下して核家族化し,子どもの育つ環境に大きな変化を生じた.
それを追うように,理由のはっきりしない文明病のようなものがまん延し始めたのである.親たちの育児感覚は180度転換し,昔日本にはなかった子育てが氾濫するようになった.育児の先達を持たない若い母は育児書に頼り,その同異に一喜一憂し,遂にはノイローゼに陥る.母のイライラや不自然さは容易に子どもに取り込まれ,その結果おとなし過ぎる子や,情緒反応の鈍い子,寝たままミルクを飲みたがる子など,何となくたくましさに欠ける子を生み出した.
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