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「呼吸器診療の楽しさとは」を書き始めるにあたってある戸惑いを覚えている1).最初にこのお題をいただいたときには「このお題は簡単だ.いくらでも書ける」と思ったのだが,書き進めるうちにふと考え込んでしまい筆が止まってしまった.理由は主に二つある.① この文章で読者の皆様に何を伝えたいのか? 呼吸器診療の楽しさ? とは言ってもこの原稿を読まれる方々には呼吸器内科医が数多く含まれるであろうし,その皆様にとって少なくとも呼吸器診療が楽しい側面はあるはずだ.そうでなければ,そもそもなぜ呼吸器診療を続けているのかという話になる.その皆様にいったい何を伝えるというのか? ② 楽しさは呼吸器診療特有の話? 診療が楽しいのは何も呼吸器に限った話ではないだろう.内科全般につながる話かもしれないし,医療全般につながる話かもしれない.とくに診療が楽しいのは「呼吸器診療」だけに限った話ではないのだ.そこで「呼吸器診療」固有の楽しさとは?
賢明な読者の皆様に「呼吸器診療は楽しいですよ」と説明したところで,「そうですよね? 私もそう思います.でもなぜ忙しい私が時間を割いてわざわざ自明なことをあらためてあなたから聞かないといけないんですか?」と思われてしまうかもしれない.この質問は致命的で,私としては「お読みになれば,おのずとわかるかもしれません」としか書きようがない.また「いやいや,循環器診療(もしくは消化器診療,腎臓内科診療……,総合診療)だって楽しいですよ」と反応される読者の方もいらっしゃるかもしれないが,「そりゃそうですよね」としか申し上げようがない.読み終わった後でも「なぜ私が貴重な時間を割いてわざわざこの文章を読まないといけなかったのかはさっぱりわからない」と思われるかもしれない.私がそんな言い方をするのは前もってそのことが予想できるからだ.しかし,これ以上御託を並べて文字数を浪費してもしょうがない.すぐ読み切れるので読者の皆様の貴重な時間もさして浪費せずに済む.お読みになられる読者の皆様の判断を仰ぐとしよう.
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